こんにちは、スクーティー代表のかけやと申します。
弊社は生成AIを強みとするベトナムオフショア開発・ラボ型開発や、生成AIコンサルティングなどのサービスを提供しており、最近はありがたいことに生成AIと連携したシステム開発のご依頼を数多く頂いています。
2025年10月、OpenAIが開発者向けイベント [ DevDay 2025 ] を開催し、AI業界に大きなインパクトを与える4つの主要発表を行いました。ChatGPTが単なるチャットツールから本格的なアプリプラットフォームへと進化し、開発者が数分でAIアプリを構築できる時代が到来しています。
今回発表されたApps SDK、Agent Kit、Codex GA、そして新APIの公開により、これまで専門知識が必要だったAI開発が劇的に簡単になり、個人開発者から大企業まで誰でも高度なAIアプリケーションを作れるようになります。
この記事では、OpenAI DevDay 2025で発表された4つの革新技術の詳細と、それらが開発者にもたらす具体的なメリットについて、実際のデモ内容を交えながら分かりやすく解説します。
OpenAI DevDay 2025 で発表された新技術とは


上記の画像は、OpenAI DevDay 2025の会場風景を表現したもので、多くの開発者が参加してAI技術の最新動向について学んでいる様子を示しています。このイベントでは400万人の開発者コミュニティに向けて、AI開発を根本的に変える技術が発表されました。
AI開発を根本的に変える4つの技術の全体像
OpenAI DevDay 2025で発表された技術は、従来のAI開発における3つの大きな障壁を取り除くものです。まず「プログラミング知識の壁」を、ビジュアル開発環境で解決します。次に「ユーザー獲得の壁」を、8億人のChatGPTユーザーベースへの直接アクセスで解決します。最後に「高度な機能実装の壁」を、最先端AIのAPI提供で解決します。
発表された4つの革新技術は以下の通りです:
- Apps SDK(アプリ統合SDK)
ChatGPT内で外部アプリケーションが直接動作する技術です。Coursera、Canva、Zillow、Figmaなどのアプリを、ChatGPTの対話画面から呼び出して操作できます。8億人のChatGPTユーザーに即座にリーチでき、開発者にとって巨大な配信チャネルを提供します。 - Agent Kit(エージェント開発キット)
ドラッグ&ドロップだけでAIエージェントを構築できるノーコード開発環境です。プログラミング知識がなくても、複雑なワークフローを持つAIエージェントを視覚的に設計できます。企業の業務自動化や顧客サポートの高度化に活用されています。 - Codex GA(プログラミング支援AI正式版)
GPT-5 Codexモデルを搭載したプログラミング支援AIの正式版です。自然言語でのコーディング指示が可能で、コードレビューや複雑なシステム構築を自動化します。OpenAI社内では開発者の生産性が70%向上しています。 - 新API群(Sora 2・GPT-5 Pro API)
最先端の動画生成AI「Sora 2」と最高水準の推論AI「GPT-5 Pro」のAPI版です。Sora 2は音声と映像を完全同期で生成し、GPT-5 Proは金融、法務、医療分野での高精度な分析を可能にします。
これらの技術により、アイデアから製品化までの時間が従来の数ヶ月から数分に短縮される革命的な変化が起きています。89歳の日本人がiPhoneアプリを11個開発したり、医学生が仮想患者システムを構築したりする事例が示すように、年齢や専門知識に関係なく誰でもAIアプリを開発できる時代が到来しました。
驚異的な成長を見せる開発者エコシステム
OpenAIの開発者エコシステムは過去2年間で劇的な成長を遂げています。開発者数は2023年の200万人から400万人に倍増し、ChatGPTの週間ユーザー数は8億人以上に達しました。
指標 | 2023年 | 2025年 | 成長率 |
---|---|---|---|
開発者数 | 200万人 | 400万人 | 2倍 |
週間ユーザー数 | 1億人 | 8億人以上 | 8倍以上 |
API処理能力 | 毎分3億トークン | 毎分60億トークン | 20倍 |
この表から分かるように、API処理能力の20倍増加が最も顕著で、AI技術が実用段階から社会インフラへと発展していることを示しています。最も印象的だったのは、会場で発表された1兆トークンを処理したアプリを開発した開発者の存在です。
今回のDevDay以前のOpenAIからの発表はGPT-5のリリースになります。こちらの記事に詳しく書いていますので、ぜひご覧ください。


関連記事:GPT-5 が遂に登場!OpenAI最新AIモデル|AGIは来なかったが優秀なo3の上位互換
Apps SDK:ChatGPTが真のアプリプラットフォームに進化


上記の画像は、Apps SDKの概念を視覚化したもので、ChatGPTを中心として複数の外部アプリケーションが シームレスに統合されている様子を表現しています。この技術により、ユーザーは一つの画面から複数のサービスを統合的に利用できるようになります。
外部アプリとの革新的な統合システム
Apps SDKは、ChatGPTを単なるチャットボットから本格的なアプリプラットフォームへと変貌させる技術です。ユーザーはChatGPTの対話画面から直接、以下のアプリを呼び出して操作できます。
- Coursera: 学習動画の再生と内容に関する質問
- Canva: ポスターやプレゼン資料の作成
- Zillow: 不動産物件の検索と詳細確認
- Figma: デザイン図の作成と編集
- Booking.com: 宿泊施設の検索と予約
従来のアプリ統合との最大の違いは、コンテキスト共有機能です。アプリ内でユーザーが見ている内容をChatGPTが理解し、その情報に基づいて質問に答えることができます。
技術的基盤にはMCP(Model Context Protocol)を採用しており、開発者はフルスタック開発環境を利用できます。データ接続、アクション実行、対話的UI、そして完全なフロントエンド制御が可能です。
実際のデモで証明された驚異的な機能
DevDay 2025のライブデモでは、「弟の犬の散歩ビジネス立ち上げ」という一連の作業が、すべてChatGPTの対話画面から実行されました。
デモの具体的な流れ
- アイデア創出: ChatGPTとのブレインストーミングで「Walk This Wag」というサービス名を決定
- デザイン作成: 「Canva、カラフルで楽しいポスターを作って」でポスター生成
- 事業計画: 「ピッチデックも作って、シード資金を調達したい」でプレゼン資料作成
- 市場調査: 「どこに拡大すべき?」でPittsburghを推奨
- 物件検索: 「Zillow、ピッツバーグの3ベッドルーム、庭付き物件を見せて」で不動産検索
各アプリは3つの表示モードを提供します:インライン表示(チャット内埋め込み)、ピクチャー・イン・ピクチャー(画面上部固定)、フルスクリーン(全画面表示)。
開発者にとっての収益化機会
Apps SDKは開発者に新たな収益機会を提供します。既存のサブスクリプションユーザーはChatGPT内からシームレスにログイン可能で、将来的に導入予定のAgentic Commerce Protocolにより、ChatGPTの対話画面内で直接決済処理が可能になります。
最も重要なのは、8億人のChatGPTユーザーベースへの即座のアクセスです。従来であればマーケティング予算と時間をかけて構築する必要があった配信インフラが、Apps SDKにより即座に利用可能になります。
Agent Kit:ノーコードでAIエージェントを簡単構築


上記の画像は、Agent Kitのビジュアル開発環境を表現したもので、左側のツールパレットから中央のキャンバスにノードをドラッグ&ドロップして、複雑なAIエージェントのワークフローを視覚的に構築している様子を示しています。この直感的なインターフェースにより、プログラミング知識がなくても高度なAIシステムを構築できます。
ビジュアル開発環境Agent Builderの革新性
Agent Kitの中核を成すAgent Builderは、ドラッグ&ドロップ操作だけで高度なAIエージェントシステムを構築できる革新的なツールです。
AI開発でよく使用される処理パターンが事前定義されたノードとして提供されています:
- ファイル検索: ドキュメントや知識ベースの検索
- MCP連携: 外部システムとの接続
- ガードレール: セキュリティと品質管理
- Human-in-the-loop: 人間による確認プロセス
- 条件分岐: 論理的な処理の分岐
実際のデモでは、開発者のChristinaが8分間でDevDayウェブサイト用のAIエージェントを構築しました。構築されたエージェントは、問い合わせを自動分類し、セッション情報の検索、一般情報の提供、個人情報保護を統合的に処理します。
企業での実用事例:AlbertsonsとHubSpot
Albertsons:店舗運営の意思決定支援
全米2,000店舗を運営するAlbertsonsでは、アイスクリーム売上32%減少という問題に対して、従来は複数部門での会議と詳細な分析レポートが必要でした。
Agent Kit導入後は、店舗スタッフが「アイスクリーム売上の減少理由は?」と質問するだけで、エージェントが季節性、過去のトレンド、外部要因を総合分析し、ディスプレイ調整や広告実施などの具体的改善案を即座に提示します。
HubSpot:顧客サポートの精度向上
植物販売会社「Luma Plants」の「アリゾナで植物の調子が悪い理由」という問い合わせに対して、エージェントは自社ナレッジベース検索、低湿度環境対策の調査、社内ポリシー確認、複数解決策の提示を自動実行します。
Chat Kitによる簡単なUI構築
Agent KitのChat Kit機能により、数行のコードでプロフェッショナルなチャットUIを既存アプリに埋め込めます。企業のブランディングに対応したカスタマイズが可能で、Agent Builderで設計したワークフローと完全に連携します。
Codex GA:プログラミング支援AIの正式版が登場
GPT-5 Codexモデルによる大幅な性能向上
Codex GAの最大の特徴は、新開発のGPT-5 Codexモデルの搭載です。このモデルはコードリファクタリングとコードレビューで大幅な性能向上を実現し、タスクの複雑さに応じて思考時間を動的に調整します。
OpenAI社内での導入成果は以下の通りです:
指標 | 改善結果 | ビジネスインパクト |
---|---|---|
新規コード作成 | 大部分がCodexユーザー | 開発速度の向上 |
プルリクエスト完成 | 週70%増加 | 個人生産性の向上 |
コードレビュー | ほぼ全PRで活用 | 品質の標準化 |
この表が示すように、Codexの導入により開発プロセス全体が大幅に効率化されています。利用状況も急速に拡大し、8月以降の日次メッセージ数が10倍に増加、リリース以降40兆トークン以上を処理しています。
チーム開発に特化した新機能群
Codex GAでは、エンタープライズ利用を想定した3つの主要機能が追加されました:
Slack統合機能
- 「新しい認証機能を実装して」「このバグの原因を調査して」等の自然言語リクエスト
- チーム内での結果共有とコラボレーション
Codex SDK
- CI/CDパイプライン、テスト自動化、カスタムワークフローへの統合
- 既存開発ツールチェーンとの seamless な連携
企業管理機能
- 環境制御、利用状況モニタリング、分析ダッシュボード
- セキュリティとコンプライアンス対応
実際のライブデモで証明された実用性
DevDay 2025のライブデモでは、エンジニアのRamanが会場の設備を使って即席でアプリケーションを構築しました。
デモの驚異的な成果
- Sony FR7カメラ制御(13分): 30年前のViscaプロトコルを理解し、UDP通信システムを完全構築
- Xboxコントローラー統合: Gamepad APIを実装し、ジョイスティックによる直感的操作を実現
- 会場照明制御: Command8プロトコル対応、音声コマンド「観客に向けてライトを当てて」で実際の照明制御に成功
重要なのは、Ramanが一行もコードを手動で書かなかったことです。すべてCodexとの自然言語対話により実現されました。
新API群の公開:Sora 2とGPT-5 Proの開発者向け提供
Sora 2 API:音声と映像の完全同期を実現
Sora 2 APIの最大の革新は、音声と映像の完全同期です。従来の動画生成AIは映像のみの出力でしたが、Sora 2では豊かなサウンドスケープ、環境音、同期した効果音が自動生成されます。
カヤックのデモ動画では、パドルの水音、水の流れる自然音、風の音、カヤックの軋む音がリアルタイムで映像に合わせて生成され、会場から感嘆の声が上がりました。
制御性の大幅向上
- 映像拡張: iPhoneサイズから映画的ワイドショットに変換
- キャラクター追加: ペットの写真から複数動物のストーリー生成
- コンセプト開発: 「新居を個性的な空間にする」から完成度の高い商品プロモーション動画
実企業での活用事例:Mattelのおもちゃ開発
大手玩具メーカーMattelでは、従来数週間から数ヶ月を要していたアイデアスケッチから3Dモデリング、プロトタイプ制作の工程が、スケッチから数分で動作する製品デモ動画生成に短縮されています。
デモでは、簡単な線画から色彩豊かで動きのあるおもちゃの動画が生成される過程が示され、製品開発の初期段階での意思決定速度が劇的に向上していることが実証されました。
GPT-5 Pro API:最高水準の推論能力
GPT-5 Pro APIは、金融、法務、医療分野での高精度な分析に特化しています。問題の複雑さに応じて思考時間を動的に調整し、簡単な質問には数秒、複雑な分析には数分をかけて多角的な検討を行います。
ただし、従来モデルと比較して利用料金が高額に設定されているため、一般的なチャットボットには従来モデル、高度な分析が必要なタスクにはGPT-5 Proという使い分けが推奨されています。
Realtime Mini API:音声対話の新標準
Realtime Mini APIは、Advanced Voice Mode同等の音声品質と表現力を開発者アプリで利用できるAPIです。Codexのデモで実演された「観客に向けてライトを当てて」という音声コマンドでの照明制御成功例が示すように、プログラミング知識のないユーザーでも音声だけで高度なシステム操作が可能になります。
AI開発の未来と今後の展望
ソフトウェア開発パラダイムの根本的変化
OpenAI DevDay 2025で示されたビジョンは、「アイデアから製品まで」の時間が数ヶ月から数分に短縮される根本的変革を予告しています。
この変革を支える3つの要素:
- プログラミング知識の不要化: Agent BuilderとCodexによる自然言語開発
- 即座の配布チャネル: 8億人のChatGPTユーザーベースへの直接アクセス
- 高度AI機能の標準化: 動画生成、音声処理、推論機能のAPI提供
実際の成功事例として、日本の89歳退職者が11のiPhoneアプリを開発、スペインでの記憶再生アプリ、医学生の仮想患者システム、ベルサイユ宮殿のリアルタイム対話体験が紹介されました。
企業におけるAI活用の加速とCisco社の成功事例
Cisco社の全社導入により、コードレビュー時間が50%短縮、プロジェクト期間が週単位から日単位に短縮されました。
成功の鍵は、従来の「設計→実装→テスト→レビュー」という線形プロセスから、AIが各段階を並行して支援する統合プロセスへの移行にあります。AIが定型的なコーディング作業を担当し、人間は創造性と戦略的思考に集中する分業体制が確立されています。
収益化モデルの多様化と技術的課題
Apps SDKにより、従来のサブスクリプションモデルに加えて、Agentic Commerce Protocol(ChatGPT内直接決済)、使用量課金、データ分析サービス等の新しい収益化モデルが生まれています。
一方で、GPT-5 ProとSora 2の高額な利用料金、PII保護とハルシネーション対策、レガシーシステムとの互換性確保等の課題も存在します。
今後の重要な発展方向として、マルチモーダル統合(テキスト、音声、画像、動画の seamless な連携)とエージェント間協調システム(複数AIエージェントの連携実行)が挙げられます。
OpenAI DevDay 2025で示されたビジョンは、AI技術が実験段階から社会インフラとして定着する転換点を表しており、今後1年間でこれらの技術がどのように社会に浸透し、新しい価値創造を生み出すかに大きな注目が集まっています。