こんにちは、スクーティー代表のかけやと申します。
弊社は生成AIを強みとするベトナムオフショア開発・ラボ型開発や、生成AIコンサルティングなどのサービスを提供しており、最近はありがたいことに生成AIと連携したシステム開発のご依頼を数多く頂いています。
こちらの記事が興味深かったので要点を整理してみました。
この記事にはどういうことが書かれている?
要約
AIプロダクトマネジメントは、生成系AIやLLM(大規模言語モデル)などのテクノロジー進歩を背景に、製品企画・要件定義・実装プロセスまでを包括する新たな局面を迎えています。従来の抽象的な要求定義では、実行者が何を実装すべきか曖昧になりやすく、期待通りの成果を得るまでに大きな手戻りや無駄が生じがちでした。
しかし、具体的なアイデアを起点とした「データがPRD(製品要件書)になる」アプローチや、PM(プロダクトマネージャー)自身がLLMプロンプティングやRAG(外部データ取得による生成強化)を駆使して技術的実現性を早期評価する手法、さらにエンジニア不要でプロトタイプを構築できるツールの普及により、短期的な学習サイクルで方向性を検証しながら、より効率的に製品価値を創出できるようになっています。
AIプロダクトマネジメントとは
AIプロダクトマネジメントは、生成系AIや機械学習モデルなどの先端技術を用いて顧客価値を創出するプロダクトを計画・開発・改善するプロセスを指します。従来のソフトウェア製品開発に比べ、モデル選定やデータ品質、モデル学習サイクル、技術的フィージビリティ評価など、特有の判断やスキルが求められます。
生成AI時代にプロダクトマネージャーが持つべき知識・行動
生成AI時代のPMは、以下のような知識・行動が求められます。
- LLMやRAGなどモデル精度・性能評価の基礎知識を持ち、エンジニア投入前にプロンプティングで初期可否を判断する行動
- 具体的なユーザー入出力例や画像注釈などの「データがPRD化」する手法を理解し、それらを活用して明確な要件定義を行う
- ReplitやVercel V0などの開発支援ツールで、PM自らが簡易プロトタイプを作成し、短期サイクルでユーザーフィードバックを取得・改善を行う
- デザイン思考の各ステップ(Empathize, Define, Ideate, Prototype, Test)を通じ、顧客理解や問題定義を精緻化し、試行錯誤を加速させる
関連記事:【生成AI】RAG(Retrieval Augmented Generation)とは?LLMの回答精度を向上させる技術
関連記事:v0.devの使い方と評価:AIでReactコード生成してみる
本記事から最も学ぶべき最重要ポイント
最も重要なポイントは、「具体的なアイデア」を起点にして、データ(入出力サンプル、注釈付き画像など)をPRDとして活用し、PM自身がLLMプロンプティングやRAGを通して早期に技術的実現性を評価、エンジニアレスなプロトタイプ構築でユーザーフィードバックを高速に取得し、デザイン思考フレームで継続的に改善するという流れが、AI時代のプロダクト成功確度を飛躍的に高める点です。
具体的データを活用した要件定義とデザイン思考の基礎
具体的なユーザーデータがPRDとなる価値
抽象的な要求だと、エンジニアが何を作ればよいか不明瞭になり、失敗リスクが増加します。 例えば:
- 「ユーザーアカウント関連の銀行問い合わせに答えるチャットボット」→残高照会のみか、利率・送金手続き対応まで不明確
- 「店舗周囲歩行者検出AI」→夜間適用やカメラ角度、100m先の物体検出可否が曖昧
しかし、10~50件程度の具体的入出力例や注釈付き画像データを提示すれば、モデルが何をすべきか明確になります。初期段階はPMが自ら写真・注釈し、後に実世界データへ移行可能。この「データ主導のPRD化」により、初期コストを抑えつつ精度の高いモデル構築サイクルが実現します。
PM主導でのプロンプティング評価と定量指標
LLM機能検討時、PMは以下の手順で初期判断可能です:
- サンプル問い合わせ10~20件用意
- LLM出力を評価し、正答率(%)算出
- 80%以上なら有望、50%以下なら改善要
RAG組み込みで外部データ参照可能になれば、同一テストセットで再評価し、精度が10%以上向上するか確認します。これら定量基準により、エンジニアコード着手前から無駄な方向を避けられます。
ツール活用による素早い試作と改善サイクルの定量化
PMがReplit等で2日以内にWebデモを構築し、5~10人のユーザーに試用させ、その満足度(1~5段階)や精度を追跡します。改善前後で評価平均値が0.5向上すれば有益、など定量目標を設定可能です。
項目 | 評価対象 | 測定手法 | 目標値 |
---|---|---|---|
分類精度 | 問い合わせメール10件 | LLM正答率 | 80%以上 |
UX満足度 | 5名ユーザー1~5評価 | 平均値算出 | 4.0以上 |
開発コスト | プロトタイプ実装時間 | ツール活用 | 2日以内 |
具体的なアイデア思考でスタートアップ戦略強化と方向転換の容易化
抽象的課題から具体的なアイデア特定までの定量的検証
「家畜農業にAI活用」→抽象的 「牛の顔認識による個体識別」→具体的 10枚の牛画像で8枚以上正確識別→90%精度目標 達成不可なら改善か別手法(RFID)検討 このような定量指標で速やかな意思決定が可能
デザイン思考との組合せで実務的バランス確保
Empathizeでユーザー行動10パターン観察、Defineで5つのニーズ特定、Ideateで20以上アイデア創出、Prototypeで3種類試作、Testで10名評価、平均満足度4.0以上を目標など、各段階で定量的ゴールを設ければ、デザイン思考が実務アプローチとして機能します。
デザイン思考各ステップとツールをMECEに整理
MECEなプロセスの箇条書き再整理
- Empathize:
- 観察:カメラスタディ、”What?How?Why?”表、エンパシーマップ
- インタビュー:個別/グループ、カードソート、コラージュ
- 没入体験:ガイドツアー、仲間観察
- Define:
- データ整理:サチュレート&グループ
- POV作成:[ユーザー][ニーズ][洞察]、Want Ad、POV Madlib
- HMW質問生成
- Ideate:
- ブレストで量産&ドット投票で選抜
- メタファー、マッシュアップ、デザイン原則
- コンセプト化
- Prototype:
- 紙、レゴ、ストーリーボード、ロールプレイなど低解像度試作品
- 変数特定&簡易実装
- ユーザードリブン試作
- Test:
- ユーザー実験、比較選択
- フィードバック収集、定量評価(満足度、精度向上)
- 再試作・改善
- Launch(運用前確認):
- ライブプロトタイプ(数週間)
- パイロット運用(数ヶ月)
「What? How? Why?」分析表
観点 | 内容 |
---|---|
What(事実) | 顧客が携帯端末で残高照会中 |
How(状況) | 顧客は即時回答を求め、焦りが見える |
Why(推測) | 遅延や曖昧回答が不満要因、正確性・即時性ニーズ |
参考資料とさらなる発展可能性
デザイン思考リソースの活用
IDEO.orgの「Human-Centered Design Toolkit」やStanford d.schoolの「bootcamp bootleg」活用で、各ステップの実務的ガイドや追加ツールを習得可能です。 これらを用いれば、ユーザー行動パターンや評価指標をさらに詳細化し、AIプロダクトマネジメントにおける意思決定精度が向上します。