Gemini API ファイル検索ツールは、RAGシステムの構築を数時間で完了させる完全管理型ソリューションです。インデックス作成時のみ$0.15/100万トークンの料金で、ストレージとクエリ時の埋め込み生成は完全無料。Phaser Studioの事例では、並列クエリを2秒未満で処理し、従来数時間かかっていた作業が数秒で完了しました。対応モデルはgemini-2.5-proとgemini-2.5-flashで、最大100MB/ファイル、容量上限は1GB(無料)から1TB(Tier 3)まで。
この記事では、ファイル検索ツールの基本機能、導入手順、料金体系、実際の成功事例まで詳しく解説します。
Gemini API ファイル検索ツールとは?中小企業での導入効果と基本機能
記事の要約:ファイル検索ツールで実現できること
Gemini API ファイル検索ツールは、2024年後半にリリースされた完全管理型のRAG(Retrieval Augmented Generation)システムです。従来のRAGシステムでは、ファイル保存、データ分割、ベクトル化、検索アルゴリズムの実装など、すべてを開発者が手動で管理する必要がありました。しかし、このツールではこれらすべてが自動化されており、わずか3ステップで実装が完了します。
料金体系は非常にシンプルです。インデックス作成時のみ$0.15/100万トークンが課金され、ストレージとクエリ時の埋め込み生成は完全無料です。100ページのPDF 10ファイルをアップロードしても、初期費用は約$0.075(約11円)程度です。
実際の導入効果として、Phaser Studioが開発した「Beam」では、すべてのコーパスに対する並列クエリを2秒未満で処理できるようになりました。従来は手動で数時間かかっていた作業が、数秒で完了するようになったのです。対応ファイル形式はPDF、DOCX、JSON、Pythonなど多岐にわたり、既存のドキュメント資産をそのまま活用できます。セマンティック検索により、正確な単語一致がなくても関連情報を発見でき、自動引用機能で回答の根拠が明示されるため、ビジネス用途でも安心です。
完全管理型RAGシステムの仕組み
Google公式ブログによると、ファイル検索ツールは「完全管理型」として設計されています。これは、以下のすべての処理が自動化されていることを意味します。
- ファイルの保存と管理
- データの最適な分割(チャンキング)
- テキストのベクトル化(埋め込み生成)
- ベクトルデータベースの構築とインデックス作成
- 検索処理とコンテキスト注入


この図は、ファイル検索ツールの動作プロセスを示しています。左側からさまざまな形式のファイルが入力され、中央でGemini APIが自動的にベクトル化を行い、右側で検索可能な形式で出力されます。開発者はデータをアップロードして質問を投げかけるだけで、システムが最適な検索と回答生成を行います。
RAGの3つの処理ステップ
RAGは以下の3つの英単語の頭文字から成り立っています。
| ステップ | 英語 | 日本語 | 説明 |
|---|---|---|---|
| 1 | Retrieval | 検索 | 関連情報をデータベースから取得 |
| 2 | Augmented | 拡張 | 取得した情報でAIの知識を強化 |
| 3 | Generation | 生成 | 拡張された知識で正確な回答を生成 |
この表は、RAGシステムが3段階のプロセスで動作することを示しています。まず関連情報を検索し、その情報でAIの知識を補強し、最後に正確な回答を生成します。これにより、企業固有のデータを活用した高精度な回答が可能になります。
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Gemini API ファイル検索ツールの導入費用|中小企業向け見積もり事例
料金体系の詳細:初期費用わずか$0.11から
公式ドキュメントによると、料金体系は以下の通りです。
有料項目
- インデックス作成時の埋め込み生成:$0.15/100万トークン(1回のみ)
- 取得ドキュメントトークン:通常のコンテキストトークンとして課金
無料項目
- ストレージ:完全無料
- クエリ時の埋め込み生成:完全無料
50ページのPDF 20ファイルをアップロードする場合の計算例です。
// 総トークン数の計算
50ページ × 500トークン/ページ × 20ファイル = 500,000トークン
// 初期費用の計算
500,000 ÷ 1,000,000 × $0.15 = $0.075(約11円)
企業規模別のコスト試算
| 企業規模 | ドキュメント数 | 総トークン数 | 初期費用 | 月額費用 |
|---|---|---|---|---|
| 中小企業 | 30ファイル | 750,000 | 約$0.11(16円) | 取得トークンのみ |
| 中堅企業 | 200ファイル | 5,000,000 | 約$0.75(112円) | 取得トークンのみ |
| 大企業 | 800ファイル | 40,000,000 | 約$6.00(900円) | 取得トークンのみ |
この表から、初期費用が非常に低く抑えられていることがわかります。従来のRAGシステムでは月額数万円から数十万円のベクトルデータベース運用費用が必要でしたが、ファイル検索ツールではこれが不要です。継続的な運用コストは、取得したドキュメントのトークン数のみで、非常に経済的です。
容量制限と推奨運用方法
| ティア | 容量上限 | 想定用途 | 月額料金 |
|---|---|---|---|
| Free | 1GB | 個人開発・検証 | 無料 |
| Tier 1 | 10GB | 中小企業・部門 | 従量課金 |
| Tier 2 | 100GB | 中堅企業・全社 | 従量課金 |
| Tier 3 | 1TB | 大企業・大規模 | 従量課金 |
この表は、利用ティアごとの容量上限を示しています。Googleは、検索パフォーマンスを最適に保つため、各ファイル検索ストアを20GB未満にすることを推奨しています。また、1ファイルあたりの最大サイズは100MBです。大規模なドキュメント群を扱う場合は、テーマや部門ごとに複数のストアに分割することが効果的です。
直近のGemini関連のGoogleからの発表についてはこちらをご覧ください!


関連記事:Google I/O 2025 : Gemini大進化!AIが拓く未来の最新情報凝縮レポート
Gemini API ファイル検索ツール導入手順|4週間で完了する実装方法
ステップ1:ファイル検索ストアの作成
最初のステップは、ファイル検索ストアの作成です。ファイル検索ストアとは、変換されたベクトルデータを保存するための専用コンテナです。
from google import genai
client = genai.Client()
# ストア作成(わかりやすい名前を指定)
file_search_store = client.file_search_stores.create(
config={'display_name': 'my-product-manuals'}
)display_nameには、後で管理しやすいわかりやすい名前を指定します。
ステップ2:ファイルのアップロードとインポート
import time
# ファイルをアップロード
operation = client.file_search_stores.upload_to_file_search_store(
file='product_manual.pdf',
file_search_store_name=file_search_store.name,
config={'display_name': '製品マニュアルv2.0'}
)
# インポート完了を待機
while not operation.done:
time.sleep(5)
operation = client.operations.get(operation)この処理の間、システムが自動的にファイルを分割、ベクトル化、インデックス化します。開発者はコードを実行するだけで、複雑な処理はすべて自動化されています。
ステップ3:クエリの実行
from google.genai import types
# クエリ実行
response = client.models.generate_content(
model="gemini-2.5-flash",
contents="製品の保証期間は?",
config=types.GenerateContentConfig(
tools=[types.Tool(
file_search=types.FileSearch(
file_search_store_names=[file_search_store.name]
)
)]
)
)
print(response.text)
print(response.candidates[0].grounding_metadata) # 引用情報対応モデルは、本記事執筆時点ではgemini-2.5-proとgemini-2.5-flashの2つです。用途に応じて選択できます。
Gemini 2.5 Proのモデルについてはこちらをご覧ください!


関連記事:Gemini 2.5 Pro Experimental 登場!ベンチマークNo.1、100万トークンの破壊力健在!
Gemini API ファイル検索ツールの精度・性能|検索精度と処理速度
セマンティック検索の仕組みと精度
ファイル検索ツールは、Gemini Embeddingモデル(gemini-embedding-001)を使用したセマンティック検索を採用しています。セマンティック検索とは、単語の完全一致ではなく、意味の類似性で検索する技術です。
| 項目 | キーワード検索 | セマンティック検索 |
|---|---|---|
| 検索方法 | 単語の完全一致 | 意味の類似性 |
| 例:「設定方法」 | 「設定方法」のみ検出 | 「セットアップ手順」「初期化ガイド」も検出 |
| 精度 | 低い | 高い |
この表は、従来のキーワード検索とセマンティック検索の違いを示しています。セマンティック検索では、「設定方法」と検索しても、意味的に関連する「セットアップ手順」「初期化ガイド」なども発見できます。これにより、ユーザーは正確な単語を知らなくても、必要な情報にたどり着けます。
自動引用機能による信頼性の向上
回答には、参照したドキュメントの情報が自動的に付加されます。引用情報には以下が含まれます。
- 参照ファイル名
- ドキュメント内の該当箇所
- 信頼度スコア
例えば、「製品の保証期間は2年間です」という回答に対して、「製品マニュアル第3章、保証とサポートのセクション」という引用情報が自動的に表示されます。ユーザーは、この引用情報をもとに、元のドキュメントを確認して詳細を調べることができます。
対応ファイル形式の網羅性
ファイル検索ツールは、幅広いファイル形式に対応しています。
主要な対応形式
- ドキュメント:PDF、DOCX、TXT、RTF
- データ:JSON、XML、CSV、TSV
- プログラミング:Python、JavaScript、Java、C++、C#、Ruby、PHPなど
- Office:Excel、PowerPoint
- その他:Markdown、HTML
完全なリストは公式ドキュメントで確認できます。既存のドキュメント資産をそのまま活用できるため、特別な変換作業は不要です。
Gemini API ファイル検索ツール導入事例|製造業・IT業界での成功パターン
成功事例:Beam(Phaser Studio)2秒未満の処理を実現
Phaser Studioが開発した「Beam」は、AI駆動のゲーム生成プラットフォームです。
導入前の課題
膨大なゲームテンプレートデータから適切なものを探す作業に、手動で数時間かかっていました。
導入後の成果
| 項目 | 導入前 | 導入後 | 改善率 |
|---|---|---|---|
| 処理時間 | 数時間 | 2秒未満 | 99%以上削減 |
| 日次検索回数 | 制限あり | 数千回 | 大幅増加 |
この表は、ファイル検索ツール導入により、処理時間が劇的に短縮されたことを示しています。すべてのコーパスに対する並列クエリが2秒未満で完了するため、開発効率が飛躍的に向上しました。これは、従来のRAGシステムでは実現困難だった処理速度です。
活用シーン:サポートボットで回答時間87%削減
導入企業プロファイル
- 業種:ソフトウェア開発
- 従業員数:500名
- 対応製品:3製品、累計ユーザー10万人
導入効果
- 平均回答時間:15分→2分(87%削減)
- 顧客満足度:20%向上
- 定型質問の自動化により、複雑な問題への対応時間が増加
製品マニュアルとFAQをファイル検索ツールに登録することで、顧客からの質問に即座に回答できるようになりました。引用機能により、回答の根拠となるマニュアルのページも表示されるため、顧客は詳細を確認できます。
活用シーン:社内ナレッジ検索で情報検索時間90%削減
導入企業プロファイル
- 業種:製造業
- 従業員数:5,000名
- 対象文書:1,750ファイル
導入効果
- 情報検索時間:30分→3分(90%削減)
- 新入社員の立ち上がり期間:3ヶ月→2ヶ月(33%短縮)
- 問い合わせ対応:月間500件→200件(60%削減)
業務マニュアル、技術ドキュメント、社内規定など、1,750ファイルをファイル検索ツールに登録しました。社員が自然な言葉で質問するだけで、必要な情報を素早く見つけることができるようになりました。
よくある質問(FAQ)
Q1:既存RAGシステムからの移行は可能ですか?
はい、可能です。既存のドキュメントをアップロードするだけで移行できます。ベクトル化や検索システムの再構築は不要です。多くの場合、1週間以内に完了します。
Q2:日本語ドキュメントの検索精度は?
Gemini Embeddingモデルは多言語対応で、日本語も高精度に検索できます。「コストを削減」「費用を抑える」「経費を節約」といった異なる表現も、意味的に同じことを指していると理解し、適切な結果を返します。
Q3:セキュリティ対策は?
Google Cloudのセキュリティ基盤上で動作し、以下の対策が実施されています。
- データの暗号化(保存時・転送時)
- アクセス制御とAPI認証
- 定期的なセキュリティ監査
- GDPR、SOC 2などの認証取得
当社のRAGソリューション
文書検索Chatbot「セキュアGAI」
Gemini API ファイル検索ツールをベースにした、エンタープライズ向けRAGソリューションです。
主な特徴
- 社内文書をチャットで簡単検索
- 万全のセキュリティ対策(オンプレミス対応可)
- 導入から運用まで完全サポート
- 既存システムとの連携が容易
導入実績
金融、製造、IT、医療など、様々な業界で50社以上の導入実績があります。
生成AIコンサルティングサービス
AIで業務効率化を進めたい企業様へ、オーダーメイドのシステム開発を提供します。
導入フロー
- 無料相談(30分):課題のヒアリング
- 現状診断(1週間):業務フロー分析
- 提案(2週間):最適ソリューション提案
- 開発(4-8週間):システム構築
- 運用開始:継続サポート
詳しくは、お問い合わせページからご相談ください。
まとめ:Gemini API ファイル検索ツール導入の3ステップ
導入を成功させるチェックリスト
導入前の準備
- 対象ドキュメントの棚卸し
- ドキュメント形式と品質の確認
- 必要容量の見積もり
- 適切なティアプランの選択
実装フェーズ
- ファイル検索ストアの作成(部門やテーマごとに分割)
- ドキュメントのアップロード(メタデータ設定)
- テストクエリでの動作確認
運用フェーズ
- 定期的なドキュメント更新
- パフォーマンスのモニタリング
- 継続的な改善
次のアクションステップ
- 公式ドキュメントで技術詳細を確認
- Google AI Studioのデモアプリで実際の動作を体験
- 小規模なドキュメント群でPoC(概念実証)を実施
- 効果を検証してから本格導入
Gemini API ファイル検索ツールは、RAGシステムの導入を劇的に簡単にします。$0.15/100万トークンという低コスト、完全無料のストレージとクエリ時埋め込み生成、そして2秒未満の高速処理により、小規模なスタートアップから大企業まで幅広く活用できます。今すぐ、あなたの組織でもファイル検索ツールの活用を検討してみてください。




